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建設業許可における事業承継とは
建設業許可における事業承継とは、建設業を営む個人や法人が、事業を後継者に引き継ぐ際に、建設業許可をそのまま引き継ぐことを指します。
2020年の建設業法改正により、事前に認可を受けることで、許可の空白期間を生じることなく、事業承継が可能になりました。
建設業許可の承継のメリット
許可の空白期間の解消
建設業法改正以前は、事業承継の際に建設業許可を新規に取得する必要があり、許可が下りるまでの間、許可が必要な工事を請け負うことができませんでした。
しかし、改正により、事前に認可を受けることで、許可の空白期間を生じることなく、事業承継が可能になりました。
許可番号の継続
建設業許可の番号をそのまま引き継ぐことができます。
手続きの簡素化
新規申請に比べて、手続きが簡素化されます。
建設業許可の承継の注意点
許可要件の確認
承継後も、建設業許可の要件を満たしている必要があります。
財産、債務、雇用関係の承継
会社法上の手続きを適正に行う必要があります。
監督処分の引き継ぎ
過去の監督処分も引き継ぐことになります。
経営事項審査の結果の引き継ぎ
公共工事の入札に参加する場合、経営事項審査の結果も引き継ぐことになります。
承継の種類
事業譲渡
建設業者が許可に係る建設業の全部を譲渡する場合
合併
建設業者である法人が合併により消滅する場合
分割
建設業者である法人が分割により建設業の全部を承継させる場合
相続
建設業者が死亡した場合に相続人が建設業の全部を引き続き営もうとする場合
承継の手続き
事業承継の効力発生前に、譲渡人(または被相続人)と譲受人(または相続人)が、それぞれ管轄する都道府県知事または国土交通大臣に認可申請を行います。
審査では、許可要件の確認に加え、財産、債務、雇用関係等の承継状況も確認されます。
審査に合格すると、認可通知書が交付され、建設業許可を承継することができます。
個人事業主の法人成り
個人事業主が法人成り(法人を設立)する場合も、事前に認可を受けることで、個人事業主時代の建設業許可を法人に引き継ぐことができます。
建設業許可の事業承継は、建設業を営む上で重要な手続きです。改正により、許可の空白期間を生じることなく、スムーズな事業承継が可能になりました。事前の準備と、専門家への相談を十分に行い、適切な手続きを進めることが大切です。
M&Aの場合の建設業許可対策
建設業許可の承継のひとつにM&Aによる承継があります。M&Aの種類(株式譲渡、事業譲渡、会社分割など)によって、建設業許可の取り扱いが異なるため、注意が必要です。
特に、経営業務管理責任者や営業所技術者(専任技術者)の要件、営業所、財産的基礎などが、M&A後も継続して満たされるかを確認する必要があります。また、M&Aの目的を明確にし、デューデリジェンスをしっかり行うことが重要です。
M&Aの種類と建設業許可の承継
株式譲渡
会社の法人格がそのまま存続するため、原則として建設業許可もそのまま引き継がれます。ただし、役員の変更がある場合は、経営業務管理責任者や営業所技術者の要件を満たしているか確認が必要です。
事業譲渡・会社分割
建設業許可は引き継げないため、買い手企業が新たに許可を取得する必要があります。ただし、買い手企業が既に許可を持っている場合は、再取得は不要です。
M&A+建設業許可承継制度
財務状況の良い建設業者を買収し、資金を投入して財産要件を満たし、建設業許可を承継する方法も考えられます。
M&Aにおける建設業許可の注意点
許可の承継要件
- 経営業務管理責任者の在籍
経営業務管理責任者の経験を持つ者を配置する必要があります。 - 営業所技術者の在籍
営業所に専任の営業所技術者を置く必要があります。 - 営業所
営業所が適切に設置されている必要があります。 - 財産的基礎
財産的基礎が十分である必要があります。 - 欠格要件
欠格要件に該当しないことが必要です。 - 業種ごとの承継
建設業許可で承継する業種は、原則としてすべてを承継する必要があります。一部の業種のみを承継することはできません。 - 下請法・建設業法令遵守
M&A後も下請法や建設業法令を遵守する必要があります。 - 専門家への相談
建設業許可に詳しい専門家(行政書士など)に相談することが重要です。
M&Aを成功させるためのポイント
- 目的の明確化
M&Aの目的を明確にし、戦略的に進めることが重要です。 - デューデリジェンス
譲渡企業の財務状況や法務、技術面などを詳細に調査する必要があります。 - 従業員の雇用
従業員の雇用や労働条件を十分に考慮する必要があります。 - PMI(買収後の統合プロセス)
買収後の統合プロセスを計画し、実行することが重要です。 - リスク管理
M&Aに伴うリスクを想定し、対策を講じる必要があります。
建設業許可を持つ企業のM&Aは、専門的な知識や経験が必要となるため、専門家への相談が不可欠です。